実際に活動をしています。
アイディアや助言をしただけでは何の効果も得られず、実際に実現するまでは自ら手配や調査の行動を起こし、できる限り行政側に負担をかけないという工夫が必要となります。
amazaon さんと連携して「ほしいものリスト」を使った物資の支援を実現した時も、市にお願いしたのは「実現に向けて検討する許可」と「避難所リスト」、それに「実際の操作を市長に体験して頂く」事でした。
実際のところ、ICTを使った支援を実現しようにも、市の職員は震災の対応で忙しく、自ら行動するしかないのです。
地方行政は財政改革で職員の数を減らし、少なくとも平常時の市民生活や想定しうる災害に対して必要かつ最低限の職員しかおりません。
今回の様な大規模災害時には、通常業務すら円滑に進めることが困難な状況にあるのです。
そのため、提案をすると同時に市長へ仕組みを実演し、調査する許可を頂き、避難所で実際のニーズがあるかを調査する事にしたのです。
本来なら多くの担当部署への根回しや許可が必要です。しかし、私は数年間情報システムアドバイザーの名を頂き、職員の方々と接してきましたから、簡単な説明で信頼して頂いたと言うほかありません。
避難所を調査してみると、インターネット環境が無かったり、市民はもちろん、職員が操作するPCも不足していました。
災害対策本部では必死にそれらを調達する努力をしていたのですが、これほど広域の災害ではどこもそれを必要としており、容易には手に入りません。
そのため、市のシステムを受託している企業や私が属する「NPO法人杜の考房」の理事長の力を借り、仙台市に支店があるメーカーからPCをお借りする手配をしました。
また、対策本部とは別な部署の課が保有するPCを回してもらうなどし、なんとか必要最低限の台数を確保できたのです。
インターネットの方は、市にお願いし、以前から市と取引のある企業の中から無線LANを手配して頂きました。
私もお手伝いできるとは伝えてあったのですが、設置と設定には市長の秘書が率先して行っておられました。
避難所でインターネットが必要なのは、県や市で提供している情報をダウンロードして印刷し、市民が閲覧できるようにしたり、避難所の職員が対策本部との連絡をとったり、毎日のように出入りのある避難民の名簿を管理するなど様々な用途があります。
また、避難している市民の方々が自立するために必要な情報を収集する目的もあります。
余談ですが、とある避難所で中学生くらいの女生徒がアメーバビグで「きたよ」をしていました。
彼女にとってインターネットは物心ついた時から既にあり、今も被災前と同じバーチャルな生活がそこにあります。きっとその空間において友人に励まされているのでしょう。
私は、こういった災害においてICTが何をすべきなのか、頭が混乱するほど様々な方向性を考えましたが、水道、電気やガスの復旧の際に黙々と復旧に努めた方々と同じように、人知れず黙々とそれを必要とする人のために行動する事だと確信しました。
少なくとも、前述の女生徒にとって、ICTは電気や水やガスと同じように、人と人との心をつなぐ大事なインフラなのです。