今の時代、クラウドという名前をいたるところで聞くようになりました。多くの自治体でもそれを利用して、災害やデータ保護に向けた取り組みをしています。さすがに個人情報を含むものについては考え方が様々ですが、それ以外のものについては今後しばらく普及が進むでしょう。
自治体だけではなく、自宅サーバーを持っていた一部のネット族もクラウドに移行しつつあります。自分でサーバーを組み立てて、OSを入れて、自前の回線とドメインでインターネットに(趣味の領域で)情報発信をするよりは、箱だけ借りて自前で構築する方が安上がりだし、何より回線を借りたり、劣化する機器を更新するなどといった投資をしなくとも良いからでしょう。
個人にとって非常に嬉しい、無料、あるいは無料に等しいクラウドサービスもありますので、Linux系のフリーソフトウエアをのせれば、今までの自宅サーバーと同品質の構築ができます。また、規模に応じて気軽にクラウドを乗り換えることも容易にできます。そのようなことから、今後もその流れは続いていくと思われます。
また、OSそのものを楽しんできた人々が、マッシュアップや、形態は違いますがスマートフォンアプリに関心を移しつつあります。機器設定やOSの設定をしても、その上で提供されるアプリケーションがなければ何の発信もできないのは当然です。今まではせいぜいHTMLを書いていた程度、言い換えればその程度の興味しか持たなかったものが、スマートフォンや開発言語のフレームワークが整うにつれ、そちらの興味が沸いてきたということもあるのではないかと思います。実際僕から見ても面白そうですし。
従来型のアプリケーション開発は、ソースのコーディング後にコンパイルという手順が必要ですが、スクリプト言語はその必要がなく、しかも結果を短時間で得ることができます。開発者側としては、仕様書を頭に叩き込んでからコーディングし、コンパイルするよりも、思考を中断せずすむスクリプト型言語はとても(精神衛生上も)良いし、クリエイティブなものです。ずっと以前に、もう昔と言われる時代にN88BASICが流行した背景と似ています。当時はインタプリタと呼びましたが、やはり即時実行型言語で、とても手軽でなじみやすかったという点があり、流行ったのです。
確かに、機器の設定からOSの設定までを含む広義的な意味でのインフラ構築よりも、コンテンツを制作する方が端的に自己主張ができますし、ある程度のインフラ知識があればAPIなどの理解ができ、クラスといった概念は、以前のオブジェクト指向なるものと比べれば、私たちのようなエンジニア系の人間にとっては規則が明確でとっつきやすいのです。
ただしかし、実はMicrosoftなどのOSも進化しており、ネットワークの一部を取り込んだり、iSaasなどに代表される環境インフラ構築型クラウドの技術を自己完結型で実装するなど、コンテンツに負けないくらいに面白いのです。残念なのは、ウィザードというものの実装も多く、なんとなく構築できてしまう事で、それは環境に応じた最適化を行えるものではなく、コンテンツを実装するための標準化を提供するもので、本質的な面白さをむしろ阻害しているような感があると感じます。
車のチューニングは、どのようなサーキットで走るかによってセッティングが異なります。今やOSも多機能になり、レースカーに負けないくらいの設定項目が存在します。サーキット(動作環境)に適合させるには、OSだけではなく、ネットワークや開発言語など、幅広い知識を必要とするものの、現代の構築エンジニアは断片的な知識を得るにとどまってはいないでしょうか。標準的なインストール知識だけでは、F1サーキットを市販のスポーツカーで走るようなものだと私は思います。それではサーキット使用料に対してのコストパフォーマンスが悪すぎると気づくべきだとも思っています。
HTML5も、スマートフォンアプリも、マッシュアップ技術もぜひ身に着けて頂きたいものです。私自身もApple XCodeでIOSのアプリを作っています。ただ、今でさえ少ない環境構築エンジニアが、今後さらに少なくなってしまわないよう、社会はもっとそちら方面にもバランスよく講習なり、講座を増やして力を入れていくべきではないかと思う、今日この頃です。