| | | | | | | | | 2009/02/05 17:33:50 プライベート♪ | | | 思索 | | | 幽閉、若しくは彷徨 十八 | |
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――これも夢想に過ぎぬかもしれぬが、《反体》が此の世に仮初にも出現したならば、《実体》は震へ慄く筈だと思うが……如何かね?
――ああ、《実体》にとって《反体》の出現は恐慌以外の何ものでもない。
――にも拘らず、存在する《もの》全てはその内部に特異点を隠し持ち、其処で《実体》と《反体》を共存させてゐるといふ不思議を、《魂》を持ち出すことで取り繕ってはみたが、しかし、そもそも何故《反体》なんぞでっち上げなければこの存在が語れなくなってしまったのだ?
――へっ、簡単なことだよ。《主体》そのものが行き詰まって、どん詰まりの処に追ひ込まれてしまったからさ。
――つまり、《主体》自らが《主体》の首を絞めてゐるといふことか?
――さうさ。
――では何故《主体》は自ら《主体》の首を絞めざるを得なくなってしまったのだ?
――へっ、《主体》に《自由》は持ち切れないからさ。
――《自由》が持ち切れない? その《自由》とは《無限》と同義語かね?
――ああ、もっと端的に言へば、時間もまた《無限》の《自由度》を持つといふことさ。
――時間の《無限》の《自由度》とは、つまり、《渾沌》のことかね?
――さうさ。つまり、時間はそもそも《渾沌》としたものに違ひないのだ。
――しかし、時間に《秩序》を与へた科学的なる思考法、或ひは世界認識の仕方は大成功だったのじゃないかね?
――ふっ、さう思へるのかい、本当のところは?
――むむ……。
――詰まる所、お前は既に現状の世界認識の仕方では《世界自体》が逃げ果せてしまふ思考の《裂け目》を見てしまったのじゃないのかね?
――それは特異点のことかね?
――へっ、何と呼んでも構はないが、お前は《パスカルの深淵》を覗き込んでゐる内に、その《深淵》にもんどりうって飛び込んでしまった――違ふかね?
――つまり、それが《反体》の素顔だと?
――ふっ、《パスカルの深淵》を《自由落下》する《意識》において、《実体》と《反体》は対消滅を繰り返しては「吾は此処なり!」といふ断末魔の閃光を煌めかてゐる……さう思はないかね?
――《主体》たる《客体》に圧し潰され……追ひ詰められた《主体》は最早《パスカルの深淵》に飛び込まざるを得なかった……さうには違ひないが……《主体》はそもそも《実体》と《反体》の対消滅に堪へ得ると思ふかい?
――へっ、堪へるしかないのさ、生き残るには。
――本当に《主体》は其処まで追ひ詰められてしまったのであらうか?
――ああ、時既に遅しさ。ハイデガーは優しく《投企》若しくは《企投》と言ったが、《主体》は《世界》に《投身自殺》しなければ最早生き残ることが不可能なまでにその存在根拠を剥ぎ取られてしまったのさ。
――何に存在根拠を剥ぎ取られたといふのか?
――《主体》自らに決まっておらうが!
――それで《反体》の登場かね? ふっ、可笑しくて仕様がない!
――可笑しいかね? ならば嗤ふがいいさ。ふっ、顔色が真っ青だぜ。
と、不意に彼の闇の視界にぼんやりと輝く人玉の如きものが飛び込んで、くるくると反時計回りに旋回をし始めたのであった。
彼にはそれが死んだもの達の魂の残滓に思へ、死者達もまたこの彼の頭蓋内の闇で繰り広げられてゐる自問自答の行く末に聞き耳を立ててゐると感じずにはゐられなかったのであった……。
(十八の篇終はり)
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| | | | | | | 積 緋露雪 | | | | | | | | | | 性別 | 男性 | | 年齢 | 45歳 | | 誕生 | 1964年2月25日 | | 星座 | うお座 | | 血液 | O型 |
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| | | | | 身長 | 172cm | | | 体型 | 痩身 | | | 職業 | 物書き | | | 地域 | 関東 | | | 性格 | 穏やか | | | 趣味 | 読書,クラシック音楽鑑賞 | | | チャーム | 特になし | | | | 自己紹介 | |
| 3度の飯より思索好き今もって独身 | |
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