| | | | | | | | | 2009/03/16 03:21:57 プライベート♪ | | | 思索 | | | 幽閉、若しくは彷徨 廿四 | |
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――一つ尋ねるが、夢を見てゐるのが己自身だといふ証左は何処にあるかね?
――ふむ……無いか……。
――さうさ。夢において夢を見てゐるのが自分自身だといふ根拠は何処にも無い。
――しかし、それは裏を返せば私自身が何処にも偏在出来るといふことと同じじゃないかね?
――ぶはっはっはっはっ。成程、夢においては《吾》は何処にも出現可能、否、夢自体が《吾》になって仕舞ってゐるか――。ぶはっはっはっはっ。つまり、お前は夢において自同律の不快を克服出来る鍵があると考へてゐるのか。しかし、もうそれは現代では通用しないぜ。確かに夢は自同律の縺れを解く鍵かもしれぬが、所詮、夢は夢だ。《吾》が《特異点》に飛び込むのを止められやしない。現に俺もお前もかうして《特異点》に飛び込んでゐるじゃないかね?
――はて、俺が何時《特異点》に飛び込んだかとんと合点がいかぬが、それでも、ちぇっ、まあ、構ひやしない! 其処でだ、夢見と《特異点》への投身の違ひは何かね?
――夢見は悦楽に成り得るが《特異点》への投身は地獄の責苦以外の何ものでもない。
――どうして地獄の責苦と言ひ切れるのかね?
――自同律と因果律が壊れてゐるからさ。
――さうすると、其処では、つまり、《特異点》では《吾》は《吾》足り得るのか?
――多分、《特異点》ではそもそも《吾》が《存在》しない筈さ。
――《吾》が《存在》しない? へっ、《特異点》では何ものも《存在》出来ないのじゃないかね?
――ふむ。多分、《存在》は無と無限と同等の何かに変質してゐるのかもしれぬが、しかし、《特異点》にも、例へば分数を持ち出して語ればだ、零分の一を考へれば解かるやうに数式で零分の一と書ける以上、《一》を初めとして数多の数字が形式的には《存在》し得る。つまり、《特異点》にあっても《存在》は《存在》し得るのさ。
――其処でだ、零の零乗は果たして《一》に《収束》するかね?
――或ひは《一》に《収束》するかもしれぬが、実際の処は、正直言って不明さ。へっ、零乗を持ち出して《死》を問ひたいのだらうが、それは《特異点》の場合無意味だぜ。
――∞の零乗は《一》に《収束》するのだらうか?
――それも不明だ。
――さうすると《特異点》で《存在》するその《もの》とは一体何を暗示するのかね?
――多分、其処では《吾》が《吾》と念じた途端、《吾》なる《もの》は無際限の《面》を見せる無限の《異形の吾》が《吾》に連座するといふ、摩訶不思議な無限相をした《吾》が出現してゐる筈さ。
――つまり、それは《一》即ち無、若しくは無限といふことなのか?
――ふっふっふっ。如何あっても《特異点》に《吾》を《存在》させたいやうだが、自同律と因果律が壊れてゐる《特異点》で《吾》を問ふのは余り意味がないのじゃないかな。つまり、《特異点》では「吾思ふ、故に吾と他が無限にありき」さ。
――へっへっへっ、つまり、《特異点》では《吾》といふ穴凹が無数に開いてゐて、《吾》は即ち《吾》を解脱せし《吾》は、《外側》からその《吾》の穴凹をまじまじと眺めてゐるが、へっへっ、《吾》はそれが《吾》だとは一向に気付けない《他=吾》に変質してゐる。
――《他=吾》?
――つまり、《吾》以外全てが《吾》といふ意味さ。
――《吾》以外の全てが《吾》? ふむ。《吾》=《吾》が成り立たない、つまり、《吾》≠《吾》であることを強ひられる処といふことか……。
(廿四終はり)
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| | | | | | | 積 緋露雪 | | | | | | | | | | 性別 | 男性 | | 年齢 | 45歳 | | 誕生 | 1964年2月25日 | | 星座 | うお座 | | 血液 | O型 |
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| | | | | 身長 | 172cm | | | 体型 | 痩身 | | | 職業 | 物書き | | | 地域 | 関東 | | | 性格 | 穏やか | | | 趣味 | 読書,クラシック音楽鑑賞 | | | チャーム | 特になし | | | | 自己紹介 | |
| 3度の飯より思索好き今もって独身 | |
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