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積 緋露雪
虚妄の迷宮
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思索に耽る苦行の軌跡
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2009/02/16 04:36:42 プライベート♪
思索
幽閉、若しくは彷徨 廿
――Soliton(ソリトン)? 


――Solitonの如き孤立波さ。


――それが永劫に消えぬと? 


――ああ。


――それを《魂》と呼んでも構はぬか? 


――呼びたいやうに呼んだらいいさ。


――Solitonね……ふはっはっはっはっ。


――ちぇっ。


――まあよい。よれよりもだ、するとSolitonの如き孤立波となりし《魂》は、永劫に、ある種の波動体として存在することを、それは意味してゐるのか? 


――さうさ。永劫、それを《無限》と言ひ換へても構はぬが、Solitonの如き孤立波として存在する《魂》は「吾、然り」と《吾》たる存在を全肯定するのさ。


――それは全否定ではないのかね? 


――ふっふっふっふっ。詰まる所、同じ事さ。


――えっ、全肯定も全否定も同じだと――。


――ああ。《主体》を解脱せし《吾》は相転移を見事成し遂げて新=存在体、略して《新体》へと変化する。


――へっへっ、今度は《新体》の登場か。それは詰まる所娑婆で生きる衆生には《新体》は永劫に訪れないといふ事と全く同じ事ではないではないのか?  


――否、あの《存在》の深き深き深き《深淵》を《自由落下》する《意識》においては必ず《実体》と《反体》の対消滅の果てに相転移を成し遂げ、《新体》へと解脱するその臨界点が存在する筈さ。


――それは……彼の世の事ではないのかね? 


――ああ、《主体》にへばり付いてゐる《生者》にとっては彼の世の事に違ひない。しかし、《主体》であることを《断念》した《生者》にとっては娑婆が即ち《新体》が存在する世界に成り得る可能性がある。


――可能性があるだと? 蓋然性で済む問題か?  


――……一つ尋ねるが、お前は狂人として生きる覚悟はあるかい? 


――何を藪から棒に。それと《新体》と何の関係があるのかね? 


――つまり、《新体》は衆生にとっては狂人としか思へぬ存在形態だからさ。


――やはり狂気の沙汰か……。


――《主体》が《主体》であることを《断念》するのだから、それは衆生にとっては狂気の沙汰にしか見えぬが、しかし、衆生たる《主体》はその深き深き深き《深淵》の底の底の底にある《彼岸》へともんどりうって飛び込む外に、へっ、哀しい哉、《主体》が《生者》たる存在体として生き残る術は最早残されてゐないのさ。


――端的に言ふが、それは《主体》の自慰行為に過ぎないのじゃないかね? 


――ふっふっふっふっ、その通り《新体》への変化は《主体》の自慰行為に過ぎぬ。そして、《主体》はその自慰行為に耽溺するのさ。


――そして自滅すると? 


――ふっ、さう、《新体》に解脱せぬ限り何処までもその深き深き深き《深淵》を《自由落下》して、最後は自滅だ……。


――《主体》は如何あっても《新体》に解脱するか《主体》が《主体》たるといふその自慰行為に耽るかのどちらかしかないと? 


――ああ、《主体》が《世界》の王たる《主体天国》は疾うに終はりを告げたのさ。


――ところが、哀しい哉、それでも《主体》は生き恥を曝して生き続ける筈だ。


――やはり何処までも醜いかね、《主体》といふ生き物は? 


――ああ、愚劣極まりないのさ、《主体》といふ生き物は。


――すると《新体》の到来はあり得ぬと? 


――《新体》に成りたい奴が成ればいいのさ。


――へっ、これからが《主体》のその愚劣極まりない醜態を否が応でも目にする外ない地獄変の世界が訪れるのだ! 


(廿の篇終はり)


自著「夢幻空花なる思索の螺旋階段」(文芸社刊)も宜しくお願いします。詳細は下記URLを参照ください。
http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-05367-7.jsp
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Profile
積 緋露雪
性別男性
年齢45歳
誕生1964年2月25日
星座うお座
血液O型
身長172cm
体型痩身
職業物書き
地域関東
性格穏やか
趣味読書,クラシック音楽鑑賞
チャーム特になし
自己紹介
3度の飯より思索好き今もって独身
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